星は分子雲コアというガスのかたまりの中で誕生することが分かっています。
今まで、観測によって、星が誕生する前の分子雲コアと星が誕生した直後の原始星(赤ちゃん星)は、数多く確認されています。
しかし、星が誕生する瞬間は観測されていません。
これは、星が誕生する現場が濃いガスの内部であるために、どのような望遠鏡を使ってもその内側を見通すことが出来ないためです。
そのため、星がどのように生まれたのかを理解するためには、物理理論やコンピュータシミュレーションが必要となります。
下の図は、世界で初めて磁場とその散逸を考慮して、ガスの塊から星が誕生するまでを直接計算したものです。
この図の中で、白い線は磁力線で赤い部分は密度が高い領域を表しています。右下の図の赤い部分が生まれたばかりの赤ちゃん星です。
また、星が生まれる際に磁力線がぐるぐると捻られてジェットやアウトフローというガスの放出現象が起こることが分かりました。
今後は、星が誕生してから現在の太陽のような大人の星(主系列星)になるまでの過程を調べていく予定です。
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上の星形成の説明では、一つの分子雲コアから一つの星(単星)が誕生する様子を示しました。 しかし、観測から多くの星は連星(双子)として生まれることが分かっています。 これは、星が誕生する前に、収縮しているガスが分裂するためだと考えられています。 下の図は、もともと一つだったガスのかたまりが重力によって収縮しながら分裂する様子を示しています。
これらの図の色は密度で黄色や赤い部分が高密度の領域です。
この図から星が出来る前に、様々な形状で分裂が起こっていることが分かります。
これら分裂片の密度が高い部分がさらに重力によって収縮して連星や多重星系になると考えられています。
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星は、誕生する瞬間にジェットやアウトフローと呼ばれる激しい質量放出現象を起こすことが知られています。 これは、星が誕生するときの産声ともいえる現象ですが、なぜこのような現象が起こるのか分かっていませんでした。 また、一つの原始星から異なる二種類のフローが現れることが観測から分かっています。 一つは、低速(~10 km/s)でいくぶん広がった構造をもつアウトフローと呼ばれるもので、もう一つは高速(>100 km/s)で非常に細長い構造をもつジェットと呼ばれるものです。 近年の我々の理論研究により、なぜこのようなフローが現れるのかを解明することが出来ました。 下の図は、数値シミュレーションで再現したアウトフロー(左)とジェット(右)の構造です。
この図で左側に示されているアウトフローは磁場が強い円盤から磁気遠心力というメカニズムで駆動しています。
一方、右側の図で見られるジェットは、原始星の近傍から磁気圧勾配力という力によって駆動することが分かりました。
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惑星は円盤の中で生まれると考えられています。近年の観測によって、我々の太陽系外でも数多くの惑星が観測されています。 これらは、観測の制限もありますが、その多くが木星や土星のような巨大ガス惑星です。 このようなガス惑星は、原始惑星系円盤中できた固体コアにガスが降着して誕生すると考えられています。 この研究では、このようなガス惑星の形成過程を理解するために、円盤中のガスが固体コア(または、原始惑星)に降着する過程を調べました。 下の図は、ガスが原始惑星に降着する様子を示しています。
この研究から、ガスは原始惑星の真上から流入することが分かりました。また、ガスの一部は赤道面から流出していきます。
また、ガス惑星の形成時間や誕生する質量を求めることが出来ました。
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一般にガス惑星は固体コアにガスが降着して形成すると考えられていました。 しかし、このようなメカニズムでは最近、直接撮像によって発見された中心星からかなり離れた場所を軌道周回するガス惑星の形成を説明することは出来ません。 これは、固体コアの形成に時間がかかりすぎて円盤のガスが散逸してしまうからです。 この研究では、星形成と同時に円盤の形成過程も計算して、円盤中で重力不安定というメカニズムによってガス惑星の形成が可能であることを示しました。下の図は計算の結果です。
この図で左上の図のオレンジ色の部分は円盤の外周から駆動している原始星アウトフローです。 右上と右下の図は、左の図の拡大図ですが、円盤の内側の領域で分裂により惑星が出来ていることが分かります。 しかし、これらの惑星は短時間で中心星に落下してしまいます。下の図は円盤内で出来たガス惑星の軌道進化を表したものです。
この図から原始惑星は、中心星から5-40AU離れた場所で誕生しますが、多くの場合、円盤との重力相互作用によって中心星に落下してしまうことが分かります。この中で生き残ったものが観測されるような遠軌道を周回する惑星に進化すると考えています。
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木星や土星の周りには、数多く温規則衛星が周回していることが分かっています。 これらの衛星は、惑星近傍のコンパクトな領域でほぼ同一面内を軌道運動しています。 そのため、このような衛星は惑星が出来る際に形成すると考えられている周惑星円盤の形成(存在)と関係していると考えられています。この研究では、十分な空間解像度で原始ガス惑星の周りの周惑星円盤の形成過程を調べました。 下の図は、数値シミュレーションから得られた周惑星円盤です。
研究の結果、周惑星円盤は、原始惑星近傍のコンパクトな領域のみに出来ることが分かりました。これは、原始惑星系が原始惑星系円盤から角運動量を捕獲する過程と密接に関係しています。
木星や土星の周りのイオ、ガニメデ、エウロパ、カリスト、レア、タイタンといった規則衛星はこのような周惑星円盤中で形成されたと考えられます。
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宇宙初期には、主に水素とヘリウムのみからなるガスが重力収縮して最初の天体(first star)が誕生したと考えられています。下の図は、そのような始原ガス中で星が出来るまでを計算したものです。図に示されているように、現在の星形成と同様に、始原ガス中でも原始星アウトフローが現れたり、分裂して連星が誕生したりすることが分かりました。。
また、宇宙初期に出来た星は大質量であるために、短時間で超新星爆発を起こして死んでしまいます。その後、その超新星残骸中で次世代の星が出来ると考えられています。下の図は超新星残骸中でガスの化学進化を計算したものです。
この計算から、ガスを十分な低温まで冷やすことが出来るH2とHD分子が生成され、次世代の星形成を促進することが分かりました。これらの次世代星は、第一世代星よりも低質量のため長寿命を持ち、まだ銀河内に生き残っていると考えられています。
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大質量星は、その寿命が尽きると超新星爆発を起こします。下の図は大質量星の中心部の鉄のコアを示しています。この研究では、このような星が重力崩壊して超新星爆発を起こす様子をシミュレーションによって解明しています。特に、磁場と回転が爆発に与える効果について調べています。