過去に在籍していた学生・研究員の研究
高性能電波望遠鏡を用いた星形成初期段階の観測的研究(徳田一起)
星や惑星系が誕生する最初期の物理過程を、電波・サブミリ波観測によって解明することを目的として研究を行っています。ALMAや野辺山45 m電波望遠鏡などを用いて、近傍分子雲から大マゼラン雲・小マゼラン雲の低金属量環境まで、さまざまな星形成領域を高分解能で観測しています。特に、分子雲コアやフィラメント、原始星周囲の円盤・エンベロープ構造に着目し、ガスの流入・流出、衝撃波、乱流、磁場の影響を調べています。最近では、原始星形成初期に磁束が外側へ輸送される可能性や、低金属量環境で分子雲がどのように星形成へ至るかの研究を行いました。これらの研究により、星形成の普遍的な物理法則と環境依存性を明らかにし、銀河進化や惑星系形成の理解につなげることを目指しています。
連星軌道の時間発展の探求(原田)
連星の中でもお互いの間の距離が10auを下回るような近接した連星の存在が観測より明らかとなっています。 連星の卵は周りにあるガスを食べることで質量を増し成長していくのですが、えさとなるガスが持つ角運動量が 大きいと連星の軌道が広がり、近接連星が形成されません。この研究では磁場を考慮した三次元の流体シミュレーションを行うことで、 連星周りのガスが持つ角運動量がどの程度抑制され、その結果近接連星が形成されうるかどうかを調べています。
右上の図はある時点の連星とその周りのガスを横から見たものです。 中心の連星から離れる方向へのガスの流れ(アウトフロー)が見られます。右下の図は横軸が連星の質量、 縦軸が連星の間の距離を表した結果です。磁場がない場合(黒線)に比べ、磁場がある場合には連星間距離が 短くなっていることがわかります。このように、近接した連星の形成には磁場が重要な働きをする可能性があることが示されました。
若い原始星の周りの降着円盤・アウトフロー・ジェット(平野)
アルマ望遠鏡によって原始星近傍の詳細な構造が観測されるようになりました。 その中には既存のモデルでは説明のつかない現象が報告されています。 そこで3次元磁気流体シミュレーションを行うことで、若い原始星の周りで起こる現象を調べています。
右の図はシミュレーションの結果で、原始星の周りの降着円盤(緑)から伸びる磁力線(紫)と、 磁気遠心力風によって駆動されたアウトフロー(赤)の様子を表しています。 降着円盤とアウトフローは磁場分布によってコントロールされ、観測より報告される複雑な構造がシミュレーション上に再現されました。
ホール効果がもたらす円盤成長の多様性(古賀)
分子雲コアの重力収縮過程では、磁場が重要な役割を果たすことが分かっています。 分子雲コアは弱電離環境であるため、非理想電磁流体力学の効果の1つである、ホール効果を考慮する必要があります。 ホール効果によって磁力線の構造は変化し、ガスの角運動量分布も変化するため、のちに中心領域に形成される回転で 支えられた原始惑星系円盤の大きさが変化します。ホール効果の強さはガス中に存在する固体微粒子(ダスト)のサイズに依存するため、 解析モデルを構築して、ダストのサイズの変化がのちに形成される円盤のサイズにどれほどの影響を与えるかを調べています。
右図は解析モデルを用いた計算結果で、横軸が中心星質量(時間進化とほぼ同義)、縦軸がダストのサイズに応じて求めた円盤の半径です。 色の違いが設定したダストサイズの違いを表しています。ダストサイズというμmの違いが、ホール効果によって数十auもの円盤の大きさの違いを生むことを明らかにしました。
近接連星形成とアウトフロー/ジェット駆動の関係性について(佐伯)
宇宙に存在する星の大半は連星として存在しています。 また、単独で存在している星も、生まれた時は多重星系のメンバーであった可能性があり、星が形成される過程を理解するためには、 連星や多重星の形成過程を調べなければなりません。特に近接した連星は、重力波を放出するような連星ブラックホールの起源や Ia型超新星を起こす天体の起源である可能性が示唆されています。近年では、比較的近接した原始星連星(連星の赤ちゃん)から ジェットやアウトフローが駆動している様子が観測されようになりました。ジェットやアウトフローの駆動には磁場が重要な役割を 果たすと考えられています。また、磁場は連星間距離を小さくする働きがあるという報告もあります。 そこで、3次元非理想磁気流体シミュレーションを使用し、ジェットやアウトフローの駆動が近接連星の形成過程において どのような影響を及ぼすのかを調べています。
右図はシミュレーション結果で、上図は連星(赤)からジェット(細く絞られた構造:青)と星周円盤(黄色)からアウトフロー (低速で開口角が広い分子流:緑)が駆動している様子を表しています。磁力線(水色)は原始星の自転により、星の近くでは捲き上げるように 捻られています。周連星円盤はオレンジ色で表しています。下図(上)は横軸が時間進化、縦軸が原始星(水色)、周連星円盤(オレンジ)、 1km/s以上のアウトフロー/ジェット(赤)の質量と連星間距離(黒破線)を表しています。下図(下)は横軸が時間進化、 縦軸がアウトフローとジェットの速度ごとの質量を表しています。この結果から、連星が形成されている間に、 低速のアウトフローと高速のジェットが駆動することを明らかにしました。